『ドカ食いダイスキ! もちづきさん』の読者は「おいしそう」と言わない
はじめに
『ドカ食いダイスキ! もちづきさん』は、まるよのかもめさんによるマンガです。21歳の営業事務・望月美琴が、大量の食事を一気に食べる「ドカ食い」をくり返します。
2024年5月に白泉社のヤングアニマルZEROとヤングアニマルWebで連載が始まり、2026年8月にTVアニメ化が発表されました(ヤングアニマルWeb)。
公式サイトは、この作品を「限界突破の禁断グルメギャグ」と紹介しています。コラボの相手にも、冷凍食品メーカー、カレーチェーン、コンビニ、ラーメン店が並びます。
SNSで作品名が書かれた回数は、直近1年で、映像化が発表された89作品の中で11位です。
食べ物のマンガがここまで話題になっていれば、読者は「おいしそう」「食べたい」と感じているのだと考えたくなります。
『もちづきさん』は、読者が「怖い」「体が心配だ」と言い合う場として、連載の初日から話題になってきました。
第1話は、公式の告知ではなく、読んだ人の「怖い」という感想で広がった
連載が始まった2024年5月9日、作品名を含むSNSの投稿は1日で4万件を超えました。直近1年のふだんの週は、1週間で1,500件ほどです。
初日の投稿のうち、リポストではなく読者が自分の言葉で書いたものは約6,000件でした。
作品の公式アカウントは、この日にはまだありませんでした。
公式アカウントの最初の投稿は8日後の5月17日で、反響が大きいため隔月の予定を月1回の連載に変える、という告知でした。
初日に回っていた投稿の中身を確かめるために、公開から36時間のあいだに起きたリポストを983件抜き取り、1件ずつ元の投稿を読みました。以下の割合は、983件のリポストを元の投稿の内容で分けたときの割合です。
作者、掲載誌、掲載サイトの投稿をリポストしたものは19%で、残りは読者の投稿のリポストでした。
読者の投稿でいちばん多く回っていたのは、怖さや体の心配、破滅に触れた感想です。リポストの35%を占めます。
「おいしそう」「食べたい」に触れた感想は、リポストの0.3%でした。
ある読者は、こんな危ない漫画を連載するなと書きながら、最近の自炊マンガでは一番好きだと評しました。
別の読者は、グルメ漫画ではなく破滅の漫画として宣伝するべきだと書いています。
目の前の人に命の危機が迫るのを見守るしかないのでホラーだ、と書いた読者もいました。
どの感想も、料理ではなく主人公の体の行く末を話題にしています。
公開告知に付く引用とリプライも、怖さと体の心配が中心で、「おいしそう」はほとんどない
公式アカウントは、新しい話が出るたびに、公開を知らせる投稿をします。この投稿に7日以内に付いた引用とリプライの本文を、4つの話について読みました。
読んだのは、反応が大きかった第11話と第18話、反応が小さかった第13話と第19話です。
第11話は、主人公がにんにくを大量に食べる回です。
第18話は、正月明けに、太った主人公が描かれた回です。
どちらの話も、怖さか体の心配に触れた投稿が4割前後あり、「おいしそう」「食べたい」に触れた投稿は2%に届きませんでした。
いいねの多い投稿に絞っても、結果は変わりません。
いいねの多い順に25件ずつ並べると、「おいしそう」「食べたい」に触れた投稿は、どちらの話でも0件でした。
第11話で最も支持を集めたのは、主人公の上司である桐本さんの肩に誰かの手がかかっている、と指摘するリプライでした。作中の食べ方を真似すると体に何が起きるかを説明する投稿や、毎回ちがう形で「やばい」と思わせてくることに感心する投稿が続きます。
第18話の上位には、これまででいちばん怖い回で、全部のページが怖い、という投稿が入りました。読んで怖くなり、起きてすぐ体重計に乗ったという投稿も入っています。
風邪をひいた主人公を描いた第19話では、怖さか体の心配に触れた投稿が34%ありました。カラオケの回だった第13話では16%でした。
第13話で最も支持を集めたのは、落ち込んだ先輩を気づかう場面への感想です。
この2話でも、いいねの多い25件に「食べたい」と書いた投稿はありませんでした。
読んだ4話には、怖さの言葉が少ない回はありましたが、おいしさの言葉が多い回はありませんでした。
医師の立場から食べ方を解説する読者の投稿が、くり返し広まっている
ある読者は、作中の食べ方が体に何を起こすのかを、医師の立場から解説する投稿を続けています。
この読者の投稿は、2025年1月から2026年9月までに約6万回リポストされました。作者本人の投稿がリポストされた回数は、連載開始からの合計で5万回あまりです。
ひとりの読者の解説が、作者の投稿と同じ規模で広まったことになります。
第10話から第23話までの14話のうち、5話で解説が1,000回以上リポストされています。
100回に届かなかった話も6話あり、解説は毎回広まるわけではありません。
読者は怖がるだけで終わらせず、何が怖いのかを読者どうしで説明し合っています。
『もちづきさん』が広まった理由
ここまでは、集計した結果です。ここからは、なぜこの作品がここまで広まったのかについて、データから考えられる理由を3つ書きます。集計した結果とは分けて読んでください。
1. 怖さは、人に伝えたくなる感情
おいしさは写真で伝わりますが、怖さは言葉で伝える必要があります。「怖い」「体が心配だ」は、誰かに向けた警告や忠告の形をとり、自分の言葉を添えて人に見せる投稿になります。
第1話の感想が公式の告知より先に広まったのは、感想がこの形だったからだと考えられます。
各話の公開告知に付く反応でも、自分の言葉を添えて人に見せる引用が、投稿者への返事であるリプライの5〜7倍あります。医師の立場からの解説が作者の投稿と同じ規模で回ったことも、この見方と合っています。
2. 読者は、自分の食生活に重ねて読んでいる
初日の感想には、多くの人が容易に想像できる手の届く範囲の「ドカ食い」をここまで徹底して描いた作品は初めてだ、と書いた投稿がありました。誰でもできそうなのが本当によくない、と書いた投稿や、自分の食生活を思い返して背筋が凍った、と書いた投稿もあります。
第18話のいいね上位にも、読んで怖くなり、起きてすぐ体重計に乗ったという投稿が入っていました。
怖がる対象が主人公ではなく自分になると、黙っていられなくなります。
3. 毎月ちがう「やばさ」が供給され、公開日が祭りになる
公開を知らせる公式の投稿がリポストされた回数を、投稿から38日目まで数えました。
最初の2日に出たリポストが、21話の中央値で全体の98%を占めます。最も低い話でも94%でした。
公開告知は第4話から第23話まで、毎回7日以内に6,000回以上リポストされてきました。直近の5話は平均で7,000回台で、第11話の4割ほどです。規模は小さくなっていますが、公開日に集まって2日で終わる形は変わっていません。
読者は公開日に集まり、2日で語り尽くし、次の話を待ちます。第11話のにんにく、第13話のカラオケ、第18話の正月太り、第19話の風邪と、毎回ちがう題材が出るので、感想が前の話のくり返しになりません。第11話の上位には、毎回ちがう形でやばいと思わせてくることに感心する投稿が入っていました。
公式もこの形に乗りました。連載開始の8日後に、反響が大きいので隔月の予定を月1回に変えると告知しています。作品名を含むリポストの半分あまりは、作品の公式アカウントの投稿です。
この3つに共通するのは、怖さそのものではありません。感想が人に伝えたくなる形になっていること、読者が自分のこととして読んでいること、語る題材が毎月供給されていることです。怖さは、この作品ではそれを満たす感情だった、という位置づけです。
この3つは、どれもこの記事のデータでは確かめきれていません。ほかの作品で同じことが起きるかも見ていません。
この作品と組むなら、おいしさより「怖がって面白がる」に合わせる
『もちづきさん』の読者は、SNSで「おいしそう」と言っていません。
第1話は怖がる感想で広まり、いまも公開告知には、怖さと体の心配を書いた引用とリプライが並びます。医師の立場からの解説が広まり、同じ集まり方が新しい話のたびにくり返されてきました。
読者がこの作品について書いているのは、怖さと、主人公の体への心配でした。
年表と、順位やソーシャル・注目の推移は、作品ページで見られます。
この作品と組む企画は、おいしさを売るより、食べすぎを一緒に怖がって面白がる形にした方が、読者の語り方に合います。
ほかの作品に当てはめるなら、見るのは怖さではありません。読者の感想が、人に伝えたくなる形になっているかどうかです。
2026年9月29日に公開された第24話の告知も、5日で5,000回以上リポストされました。TVアニメ化の発表後も、読者は新しい話の公開日に集まっています。
計算方法・データについて
- 対象は、作品の正式名を含むSNSの投稿と、作品の公式アカウントが各話の公開を知らせた投稿に付いた反応です。期間は2024年5月から2026年9月です。「もちづきさん」とだけ書いた投稿は数えていません。投稿の件数は、元の投稿、リプライ、リポストの合計です
- 第1話は、公開から36時間のリポストを3時間ごとに最大100件、合計983件抜き取りました。最も多く回っていた1本は題名とリンクだけの投稿で、読者が何に動かされたのかは、この投稿の本文からは分かりません
- 引用とリプライの本文を読んだのは、第11話、第13話、第18話、第19話の4話だけです。第13話では怖さの言葉が16%にとどまり、どの回も同じ読まれ方をしているとは言えません
- 本文の分類は、決めた単語が入っているかどうかで数えました。怖さは「怖い」「恐怖」「ホラー」など、体の心配は「死」「糖尿」「血糖」「病」「健康」など、おいしさは「食べたい」「うまそう」「おいしそう」「飯テロ」などです。どの単語にも当たらない投稿が4〜5割あります。いいねの上位で単語に当たった投稿は、本文を読んで確かめました
- 公開告知のリポストを最初の2日とそれ以降に分けた集計は、第3話から第23話までの21話が対象です。最初の2日は投稿から48時間、それ以降は3日目から38日目までです
- 図の指数は、最も多い話を100として、ほかの話の回数を換算したものです
- 怖さの言葉の多さと、反応の大きさは対応していません。第19話は怖さの言葉が多い回でしたが、反応は小さい回でした。どんな回が大きく話題になるのかは、この記事では言えません
- 第11話のいいね上位には、病気を認めない人の心理を笑いにすることを問う、批判的な投稿も入っていました。読者の全員が面白がっているわけではありません
- コラボの週に増えた投稿が、商品に関心を持った人の投稿なのか、作品のネタとして盛り上がった人の投稿なのかは見ていません
- 鍵つきのアカウントと削除済みのアカウントの反応は数えられていません。このため、数えたリポストは、投稿に表示されている数の8割ほどになります
- ほかの食べ物のマンガが同じ読まれ方をしているかどうかは見ていません
- 読者の投稿は、本文をそのまま載せずに言い換えています。リンクや埋め込みを置いたのは、作品の公式アカウントの投稿だけです
本記事の集計と文章はAIが作成しました。Fanmetryの運営は株式会社SevenDayDreamersです。記録は2026年10月6日時点です。
訂正履歴:なし(第1版・2026年10月6日公開)